カフェと本と靴のまち。久留米で見つける、知的さんぽの時間
誰もが知る観光名所を巡るのではなく、まちの日常にそっと入り込む——そんな歩き方が似合うのが久留米です。“モノづくり”のまちとして知られるこのエリアには、職人の哲学が息づくアパレルショップ、焙煎の香りに足を止めたくなる珈琲店、感性を刺激する本屋、そして静かに向き合いたい日本茶の空間が点在。通りをひとつ曲がるたび、文化や人の温もりに出会えるのも、このまちならでは。今回は、カフェ・本・靴をキーワードに、久留米の奥行きを感じる“知的さんぽ”をご案内します。
しのはら珈琲店|香りに導かれ、久留米の日常と向き合う珈琲時間
六ツ門の一角で、長く久留米の人に親しまれてきた老舗「しのはら珈琲店」。レンガ調の店内は少し照明を落とした落ち着いた雰囲気で、扉を開けた瞬間から、ふわりとコーヒーの香りに包まれます。窓際の席からは、行き交う人々やまちの表情がゆっくりと流れ、時間の速度が自然と緩んでいくよう。
店を切り盛りするのは、二代目店主の篠原裕典さん。先代の時代から受け継がれる味を守りながら、少しずつ今の感覚を重ね、オリジナルの完成形へと近づけています。焙煎でコーヒーの味は8割決まるそう。豆そのものの表情を引き出す“焼き具合”こそが、「しのはら珈琲店」の基軸になっています。
抽出はサイフォン式。カウンター席では、赤みを帯びたコーヒーが上下する様子を間近に楽しめ、まるで理科の実験を眺めているかのようです。
現在は浅煎りをベースに、軽く豆を撹拌するスタイル。付きっ切りにならない分、お客さんとの会話が生まれるのもサイフォンならでは。提供されるのはサイフォンごとで、たっぷり2杯分。最後まで温もりを感じながら、ゆっくり味わえます。
コーヒーのお供にはケーキがおすすめ。ショーケースには久留米や近隣のパティスリーのケーキが並びます。味を吟味してセレクトしているため、1店1種ということも珍しくありません。今では人気店となった国分町の「oriha」のスコーンも取り扱っていたそうで、まだ知られていないお菓子を発信する場にもなっています。地元と一緒につくるからこそ、まちを盛り上げる相乗効果も感じられます。
しっかりとした軸を持ちながら、時代の変化とお客さんの好みに耳を澄ませ続ける「しのはら珈琲店」。コーヒーも、空間も、店主のコーヒー愛も静かに、でも確かに、久留米の日常に溶け込む一軒です。
■しのはら珈琲店
住所:福岡県久留米市六ツ門町6-1
電話番号:0942-32-0932
営業時間:月~土曜=11:30~/日曜=9:00~夕方
休み:不定休
アクセス:西鉄天神大牟田線「西鉄久留米駅」から徒歩約15分
MINOU BOOKS 久留米|暮らしの延長線にある、本と出会うための静かな場所
うきは市にある「MINOU BOOKS」の世界観を、久留米のまちにそっと広げた2号店。コンセプトは“くらしの本屋”。オーナー・石井さんの視点で選ばれた本は、食、映画、アート、文学、健康など、日々の暮らしに静かに寄り添うジャンルが中心です。今の気分を映し出す一冊、思いがけず心に引っかかるタイトルが並び、ページをめくる前から、わくわくとした予感が漂います。
店内ではオリジナルグッズの販売や、作家・クリエイターによる展示会が行われることもあり、本を介して人や表現がゆるやかにつながっていきます。
「MINOU BOOKS」が10周年の節目に初めて出版したのが、「暮らしの本」。これまで店に関わってきた35名が参加した書評エッセイ集です。立場や感性の違いが映し出す、さまざまな暮らしの景色と一冊の紹介は、この本屋のあり方そのものを表しています。
すっきりとした店内にはカフェも併設。久留米のコーヒーショップ「COFFEE COUNTY」が、この店のために特別にブレンドしたコーヒーやカフェオレ、うきは産・新川製茶の有機ほうじ茶を使ったほうじ茶ラテなど、飲み物にも物語があります。店内での読書もOKなので、思い思いの時間を過ごせます。
“本を探しに行く”というよりも、暮らしのヒントに出合いに行く場所。「MINOU BOOKS 久留米」は、久留米のまち歩きに静かな余白を与えてくれる一軒です。
■MINOU BOOKS 久留米
住所:福岡県久留米市小頭町10-12
電話番号:0942-64-8290
営業時間:11:00~19:00(LO18:30)
定休日:火曜
アクセス:西鉄天神大牟田線「西鉄久留米駅」から徒歩約15分
アメリカン クロージング カンパニー|アパレルから知る、久留米のものづくりと靴の背景
久留米で30年以上、アメリカンカジュアルを軸に“本当に良い服”を提案し続けてきた「アメリカン クロージング カンパニー」。店内に並ぶのは流行を追いかけるアイテムではなく、長く着るほどに体になじみ、味わいを増していくものをセレクトしています。
かつてはアメリカ製に強いこだわりを持っていたこの店ですが、近年はその価値観にも変化が。岡山のデニム、和歌山のTシャツやスウェット、奈良のソックスなど、日本各地の産地が持つ高い技術力に改めて注目しています。日本の確かな品質を正しく評価し、伝えているのがこの店のスタンスです。
なかでも注目したいのが、久留米の歴史と深く結びつくスニーカー。ゴム産業のまちとして発展してきた久留米には、ムーンスターやアサヒシューズといった老舗メーカーが根付き、150年近く靴づくりを続けてきました。
「アメリカン クロージング カンパニー」では、そうした背景を持つスニーカーを、ただ「履きやすいから」ではなく、作り手の思想や技術とともに紹介してくれます。
バルカナイズ製法によって生み出される靴は、しなやかで屈曲性に優れ、丈夫で壊れにくいのが特徴。一足ずつ手仕事が加わるため、微妙な個体差が生まれ、それが“表情”になります。大量生産にはない温度を感じられる靴だからこそ、履くほどに愛着が深まります。
「アメリカン クロージング カンパニー」は、品質の良さを静かに、でも確かに伝えてくれる存在。作り手の背景まで丁寧に教えてくれます。久留米のまちを歩きながら立ち寄れば、服や靴の見え方が少し変わり、日常を支える一着・一足との出合いが、きっと待っています。
■アメリカン クロージング カンパニー
住所:福岡県久留米市通東町2-15
電話番号:0942-37-9322
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜
アクセス:西鉄天神大牟田線「西鉄久留米駅」から徒歩約4分
ほうじ茶の新たな価値を久留米から、日常に寄り添う一杯を届ける専門店
久留米のまちに佇む「茶舗ふりゅう久留米店」は、卸売からはじまったほうじ茶専門店。日常のお茶を“もっとおいしく、もっと身近に”という想いが、一杯のほうじ茶に込められています。
2011年、卸売専門としてスタートした同店は、津福本町、本町、通町と久留米市内で店舗を移転しながら、約10年にわたり歩みを重ねてきました。開業当初はお番茶を取り揃えていましたが、次第に煎茶を取り扱うように。番茶は健康志向の方には支持される一方、日常的に飲まれるお茶としては広がりにくく、その実感が「ほうじ茶専門店」への転換につながっています。
ほうじ茶は、日本茶の中でも買いやすく、日常に取り入れやすい存在です。しかし一般的には、二番茶・三番茶を使った安価なお茶という印象を持たれがち。そうした固定観念を覆し、ほうじ茶の魅力を伝えています。
自家焙煎機を導入してからは、店主自らが農家から仕入れた茶葉をセレクトし、火入れや焙煎、ブレンドまでを手がけています。産地を訪れ、茶畑や製造工程を自分の目で確かめることも大切にしており、オリジナルブレンド「フリュー」など、ここでしか味わえない商品を生み出しています。
お茶の時間をより深く楽しませてくれるのが、甘味の存在。なかでも人気の白玉ぜんざいは、自家製あんこにきび糖を使用し、甘さ控えめに仕上げています。白玉は下茹でしたものを注文ごとに温めなおし、とろけるようなやわらかさ。筑前町の「たねよし」の最中はそのままいただいたり、ぜんざいに浸したりと味や食感の変化も楽しめます。
音楽が流れる落ち着いた空間で、お茶を淹れ、味わい、くつろぐ時間。温度や抽出時間による違いを楽しみ、お茶に寄り添うスイーツとともに一服するひとときは、日常にやさしい余白をもたらしてくれます。
■茶舗ふりゅう久留米店
住所:福岡県久留米市通町109-1
電話番号:0942-55-8396
営業時間:火~金曜=11:00~17:00/土曜=13:30~17:30
定休日:月曜、日曜(※不定休あり)
アクセス:西鉄天神大牟田線「花畑駅」から徒歩約13分
久留米には、立ち止まりたくなる理由があります。一杯の珈琲、本の余韻、足元を支える一足、そして湯気立つお茶の時間。
まちの日常にそっと触れることで、自分の感覚も少し研ぎ澄まされていく——。そんな“知的さんぽ”を、久留米で味わってみてください。
※掲載されている情報は2026年2月時点のものです。お出かけ前にはWebサイトや電話で最新情報をご確認ください。