【伝統工芸】世界と対話し、縁を紡ぐ絣。
久留米絣オープンファクトリー体験レポート④|下川織物
福岡県南部に根づく伝統工芸・久留米絣(かすり)。産地では織元ごとに見学スタイルが異なり、工程をじっくり見る工房もあれば、思想や背景を学ぶ時間を大切にする工房もあります。
下川織物は、後者の代表的な存在。工房見学のメインは、代表・下川さんによるギャラリートークを中心に進みます。スライドを交えながら、絣の歴史や国内外との協働、ものづくりの哲学についてじっくり話を聞くことができます。
布を通じて人と人がつながる。その対話は、土地を越え、国境を越え、世界へと広がっていく。久留米絣がこれからどんな縁を結んでいくのか、その可能性を感じる時間でもありました。
工房情報(住所・見学内容・体験など)
下川織物
住所:福岡県八女市津江1111-2
TEL:0943-22-2427
<工房見学について>
見学内容:工場内部の見学と動画やスライドを用いたレクチャーを通して、絣づくりに宿る思想や、国内外との協働事例から得た知見をご紹介。
所要時間:約60分(目安)
料金:4,000円
買い物:反物・切り売り・洋服・小物の購入可。
お土産:久留米絣の全工程を紹介した資料
<体験について>
体験内容:久留米絣の工程や下川織物の取組などのレクチャー、工房見学のあと、久留米絣のストールを作ります。
所要時間:約2時間(目安)
料金:7,800円
申し込みはこちら
以下のリンク(外部サイト)から申し込むことができます。
現場の空気を感じることから
見学は、解説から始まりません。まずは工場の空気を、そのまま感じてほしいという思いからです。北向きの窓から入るやわらかな光は、一年を通して色の見え方を安定させます。季節によって窓を開閉し、作業環境を整えるなど、細やかな配慮が随所に見られます。こうした積み重ねが、品質を支えています。
創業から約80年。70年以上使い続けている織機もあり、天井のモーターからベルトで動力を伝える仕組みが今も現役です。古さそのものではなく、この方法で続けてきた時間が、ものづくりの説得力となっています。
久留米絣の本質は、“シェア”の精神
下川織物の話は、久留米絣のルーツへと自然に広がっていきます。絣は、井上伝の発想から始まり、技術を共有しながら発展してきた文化です。オリジナルを競うだけでなく、「誰と何をするか」を大切にする姿勢は、この産地の歴史とも重なります。
3代目の下川強臓(しもがわ きょうぞう)さんにとって、絣は言葉が通じなくても、理解し合うことができるコミュニケーションツール。世界との対話を生み出す存在です。
図案に映る世界の個性
下川さんは、図案を「音楽の譜面」に例えます。設計図に落とし込まれた図案は、どこか楽譜のようにも見えるのだといいます。世界のどこでも楽譜は同じように読めますが、奏でられる音は、文化や人によって表情が変わります。織の設計図も同じです。描く人が変われば、どこか北欧のリズムを感じたり、フランスの空気をまとったりすることもある。関わる人によって、布は新しい表情を見せてくれるのです。
未来を見据えたものづくり
だからこそ、まだ実感されていない未来を想像しながら制作を続けています。海外との交流を通じて、100年前の久留米絣が遠い国で大切に着られている光景に出会ったことが、大きな転機となりました。絣は商品以上に、時間や空間を超えて人をつなぐ存在であると実感したそうです。
世代をつなぐ産地の姿
工場では、ベテランから子育て世代まで、幅広い人たちが関わっています。子どもを連れて働く姿もあり、地域の暮らしの中に絣が息づいています。近年は息子さんも後継者として作業場に立つようになりました。親子3世代で支えるものづくりの姿は、産地の未来への頼もしさを感じさせてくれます。
絣を通じて縁を紡ぐ
国内外のアーティストとの協働や滞在制作も、下川織物の大きな特徴です。布をきっかけに信頼関係が生まれ、新しい仕事や表現へと発展していきます。
「言葉や文化が違っても、布を介せば理解し合えます」
その積み重ねが争いを減らし、平和につながると下川さんは語ります。絣を作り続けることが、世界を少し穏やかにする。その言葉には、実体験から生まれた重みがあります
ここでしかできない体験
オープンファクトリーでは、工程の見学だけでなく、思想や哲学に触れることができます。染めや織りの現場を間近に感じながら、布の背景にある時間の厚みを体感できるのが魅力です。
工場内のショップでは、反物の端や短い生地も販売しています。その時々で並ぶ柄が変わるため、宝探しのように選ぶ楽しさも人気です。見学をきっかけに通うファンも多く、暮らしと絣をつなぐ入口となっています。
未来へ続く久留米絣
久留米絣は、過去の文化ではなく、未来へ向かう表現です。訪れる人との出会いが、新しい価値を生み出していきます。見学の時間は、単なる体験ではありません。その出会いが、誰かの日常を少し変えるきっかけになるかもしれません。
久留米絣の現在と未来を感じる旅へ。その第一歩として、ぜひ下川織物を訪れてみてください。
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