【伝統工芸】染めと織りで、産地の品格を磨く。
久留米絣オープンファクトリー体験レポート⑤|野村織物-1

【伝統工芸】染めと織りで、産地の品格を磨く。
久留米絣オープンファクトリー体験レポート⑤|野村織物

福岡県南部に根づく伝統工芸・久留米絣(かすり)。この地域では、今、工房を訪ねてものづくりの現場に触れる体験が広がりつつあります。同じ絣を織りながらも、それぞれの強みや役割の違いが見えてきます。
今回訪ねた野村織物は、染色への徹底したこだわりと、分業の連携によって品質を高め続けてきた工房。色と織りの精度を追求するその姿勢は、人を育て、産地の品格を支えるものづくりへとつながっています。


工房情報(住所・見学内容・体験など)

野村織物
住所:福岡県八女郡広川町新代1745
TEL:0943-32-0018

<工房見学について>
見学内容:整経から織りまで、絣の工程全体を見学。
所要時間:約40分
料金:2,000円
買い物:反物・切り売り・洋服・小物の購入可。
お土産:お好きなハギレをプレゼント。

<体験について>
体験内容:工房見学のあと、久留米絣を使い、オリジナルの「あずま袋」を作ります。
所要時間:約2時間(目安)
料金:7,800円


申し込みはこちら

以下のリンク(外部サイト)から申し込むことができます。


染色から始まる野村織物のものづくり

野村織物の工房見学は、染色から始まります。織り上がったときに、いかに色むらのない布に仕上げられるか。その完成度は、糸の段階でどこまで整えられるかにかかっているといいます。
染めを担うのは、代表の野村周太郎(のむら しゅうたろう)さん。その眼は、糸のわずかな濃淡も見逃しません。染料の配合、温度、圧力、水量まで細かく調整しながら、理想の発色へと近づけていきます。条件を少し変えるだけで仕上がりが変わるため、日々の積み重ねがそのまま品質につながります。色をつくり、糸の状態を見極め、次の工程へとつなぐ。染めの精度が織りの仕上がりを決める——そう信じ、いまも現場に立ち続けています。


分業を品質の力に変える

久留米絣は本来、分業制で成り立つ産業です。野村織物でも、「くくり」は専門の職人へ外注しています。図案をもとに糸を整え、経糸(たていと)・緯糸(よこいと)それぞれの職人が、正確に縛りを施します。くくりが終わった糸が戻ると、そこから先の工程はすべて自社で行います。染色、くくり解き、糊付け、天日干し、経糸と緯糸それぞれの織りの準備、織り——無数に続く工程のなかで、それぞれの職人が役割を担いながら、チームとして品質を高めていきます。
誰か一人の技だけでは、布は完成しません。次の工程を想像し、状態を伝えながらバトンをつなぐ。その連携があるからこそ、均質で高品質な絣が生まれます。一人ひとりがプロとして責任を持つ。その環境が、人を育て、産地としての品格を育んでいるのです。


織元としての誇り

野村さんの信念の根底にあるのが、祖父の言葉です。
「織元たるもの、生地を売ってなんぼ」
コロナ禍で受注が止まったときも、工場を止めることはありませんでした。助成金を受けて休む選択もありましたが、機械を止めれば調子が狂い、職人も離れてしまう可能性がある。そう考え、感染対策を徹底しながら織り続けました。その結果、コロナ明けに生地不足が起きた際、「野村に行けばある」と評判を呼び、新たな信頼につながりました。織り続けること自体が、産地を守ることでもあったのです。

図案と色が生み出す独自の世界観

看板柄として知られる「花菱格子」。長く愛されてきた定番でありながら、いまもなお新鮮で、可憐な魅力を放ち続けています。その定番を大切にしながら、新柄は年間約60柄。図案と色を丁寧に重ね、繊細な織りを紡ぐことで、野村織物らしい表現が育まれています。
また、グラデーションを表現する際には、前後の色の糸を織り交ぜ、自然な移ろいをつくります。無地のように見える布にも複数の色を重ね、奥行きのある表情を生み出しています。一枚の布のなかに、色と織りを重ねていく。その丁寧な積み重ねこそが、野村織物のものづくりの根底にあります。


オープンファクトリーで見える静かな精度

見学では、糸を巻く製経の工程から、染色、織りまでの流れを間近に見ることができます。化学染料を使った機械織りとはいえ、その背景には無数の手間と調整が積み重なっています。
一本一本の糸の状態を見極め、わずかな差を整えていく。その静かな作業の連続が、最終的な布の表情を決めていきます。
野村さんの絣は、どこか凛としたたたずまいがあります。その静謐な織は、集中力の結晶ともいえるものです。


125周年から始まる新しい挑戦

一枚の布のなかに、色と織りを重ねていく。その丁寧な積み重ねこそが、野村織物のものづくりの根底にあります。
創業125周年を迎えた現在は、ブランド「ノムラコットンオーガニック」を立ち上げるなど、新たな取り組みも始まっています。これまで培ってきた技術と知識を礎に、久留米絣の可能性を現代の暮らしへと開ていく試みです。伝統を守るだけでなく、いまの時代を見つめながら未来を切り拓いていく。その姿勢が、野村織物の新しい一歩を物語っています。


フェアな姿勢で織り続ける

「ものづくりを担う者として、何を目指すのか。いまでもまだ勉強中です。分業制の中で、均質で良質なものを目指しながら、どんな立場の人ともフィフティーフィフティーの関係を築いていけたらいいですね」そう語る野村さん。
飽くなき探究心と誠実な姿勢が、一つひとつの織りの価値を生み出しています。いい織りは、技と心の鍛錬の積み重ねから生まれる。静かな工房に身を置くと、その言葉の意味が少しずつ腑に落ちていきます。凛とした布の背景には、人と人の信頼の積み重ねがあるのです。


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