【伝統工芸】絣の文化をまとう楽しさを届ける
久留米絣オープンファクトリー体験レポート⑥|丸亀絣織物-1

【伝統工芸】絣の文化をまとう楽しさを届ける
久留米絣オープンファクトリー体験レポート⑥|丸亀絣織物

福岡県南部に根づく伝統工芸・久留米絣(かすり)。美しい布に心を奪われても、その背景にある工程に触れる機会は、まだ多くありません。丸亀絣織物のオープンファクトリーでは、糸をほどき、染め、触れる小さな体験を重ねながら、ものづくりの奥行きを体感できます。自分の手で糸に触れた瞬間、絣は遠い存在ではなく、自分の暮らしへとぐっと引き寄せられていきます。
伝統的な工法を守りながら、アパレルとしての絣の可能性を開く丸亀絣織物。伝統を翻訳し、日常へと届ける。その視点こそ、この工房の個性です。


工房情報(住所・見学内容・体験など)

丸亀絣織物(たてよこ STORE+LABO)
住所:福岡県八女郡広川町日吉90-2
TEL:0943-32-0048


<工房見学について> 
見学内容:動画を観た後、くくり解きやつまみ染めの体験を交えながら織りの工程を中心に現場を見学。
所要時間:約60分(目安)
料金:2,000円
買い物:反物・切り売り・洋服・小物の購入可。
お土産:久留米絣を使った花瓶敷


申し込みはこちら

以下のリンク(外部サイト)から申し込むことができます。


「たてよこ STORE +LAB」から始まる体験

見学は、2025年にオープンしたラボ併設型ショップ「たてよこ STORE +LAB」から始まります。まずは映像やパネル展示で、久留米絣の基本構造を学びます。柄を設計して、糸を括って先に染め、織り上げるという仕組み。知識を得たあとに実際の体験へ進む構成は、理解をぐっと深めてくれます。
ここでは、染め上げた糸に巻きつけられた「くくり糸」をほどく体験ができます。糸をほどいた瞬間、白く柄が現れます。その小さな驚きが、絣という布の奥行きを教えてくれます。わずか数センチの糸束にも、自然と愛着が湧いてくる時間です。


久留米だけの技法「つまみ染め」

今回のオープンファクトリーでは、現在、久留米にしか残っていないといわれる「つまみ染め」の体験も盛り込まれています。白く残った箇所に色を追加で染めるために、糸のごく細い部分を棒で挟み、転がすように染料を擦り込む技法です。効率だけを考えれば、削られてもおかしくない工程。しかし丸亀絣織物では、それを体験として開いています。
細やかな作業を実際に経験すると、一本の糸の見え方が変わります。海外からの視察も多く、来訪者の知識レベルや興味に応じて解説を柔軟に変えています。専門的な質問にも丁寧に答える姿勢からは、工房の懐の深さが感じられます。


縫製までが丸亀の絣

丸亀絣織物の個性は、生地だけにとどまりません。ロックミシンは使わず、折り伏せ縫いで裁ち目を隠す。丈夫な木綿の絣を、長く着続けることを前提に仕立てています。染めの段階から仕立てまで一貫して考えることで、絣は“布”から“日常に着るもの”へと形を変えていきます。
“生地”としての絣を織るだけではなく、“日常に着るもの”として完成させる。その視点が、アパレルの勉強をした丸山さんらしさです。外干しの作業をしながら、整然と並ぶ糸を前に「この子と、この子でどんな縞を作ろうか」と考える時間が好きだといいます。染め上げた糸の並びを見ながら、すでにデザインは始まっています。まだ織り上げる前の糸の段階で、未来の布が見えているのです。


図案と色で表現する粋

染色は自社で行っています。染料は可能な限り単色で揃えています。理由は明快です。染料を混ぜれば色は濁ってしまうから。できるだけ澄んだ発色を保つため、濃度や水量を細かく調整します。お湯で洗って色が出ないことを確認してから、次の工程へ進みます。染めは、丸山さんにとってカラーパレットを整える作業でもあります。アパレルの視点が、ここにも息づいています。


火災からの再出発

2013年、火災で工場と住居、そして織機のすべてを失いました。
「自分まで肩を落としている暇はなかった」
そう丸山さんは振り返ります。産地の仲間たちから織機や道具を譲り受け、整備を重ね、再出発しました。いま工場に並ぶ織機の一台一台が、その再建の歴史を物語っています。今では若いスタッフも加わり、福岡県のインターンシップ事業で受け入れたことをきっかけに移住した人もいます。地域産業でありながら、開かれた姿勢を持ち続けています。
「まずは、真摯に絣を生み出していくこと。その上で、支えてくれた人たちへの恩返しをしながら、産地を盛り上げたい」
その言葉には、感謝と未来への希望が込められています。


ものづくりの楽しさを原動力に

2025年に発表したドット柄は「久留米絣新作展」で経済産業大臣賞を受賞しました。シンメトリーとアシンメトリーの間を探る絶妙なバランスです。
「これは“降りてきた”図案ですね」と丸山さんは笑います。「たてよこSTORE +LAB」に隣接した空き地には、将来的に藍染めのアトリエ構想もあります。体験の幅を広げ、産地として裾野を広げる挑戦は続きます。
伝統をそのまま保存するのではなく、日常に翻訳する。丸亀絣織物は、絣という文化を、日常に落とし込んだ一着を届け続けています。扉を開けば、糸が色になる瞬間に立ち会えます。敷居は決して高くありません。少し勇気を出せば、伝統はぐっと身近なものになります。


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