石炭輸送のレールがつないだ日田彦山線BRT ひこぼしラインでめぐる旅
北九州・小倉と大分・日田をつなぐため、かつて石炭輸送の要として敷設された「日田彦山線」。2017年の九州北部豪雨で甚大な被害を受け、現在は添田駅〜日田駅の約40km区間を、バス高速輸送システム「BRTひこぼしライン」が走っています。それは石炭で栄えた沿線の歴史と、緑豊かな山あいの景色をつなぐ新しい移動手段。
今回は「BRT全線(添田駅~日田駅)1日フリーチケット」と「添田町・東峰村・日田市で使える特典クーポン」がセットになったデジタル乗車券「BRTひこぼしライン1DAY満喫フリーチケット」を利用した日帰り旅へGO。宝珠山駅を出発地点に、東峰村と添田町の魅力を巡りました。
宝珠山駅|木のぬくもりが迎える、旅のはじまりの駅
山里に佇む宝珠山駅は、かつてJR日田彦山線の列車が往来していた場所。2025年3月末に駅舎がリニューアルされ、訪れた人を温かく迎えるスポットへと生まれ変わりました。
駅内にはパンフレットや地元の工芸品が展示され、まちの情報発信の拠点としても機能。「子どもたちが来たくなる駅にしたかった」という思いから、カフェやキッズスペースが併設され、家族で訪れたくなる空間が広がっています。
駅舎内の「CAFE POPO」は木枠の窓から光が差し込む穏やかな空間で、旅マエにのんびり過ごす時間もこの駅ならではの魅力です。
ドリンクは高取焼の窯元・鬼丸さんが作ったカップで提供され、器の表情を眺めるだけで、旅の気分がふっと高まります。カフェのメニューは、近くの岩屋湧水を使ったものを提供。ほかにも、駅オリジナルのマグカップやTシャツ、キーホルダーなどのグッズが販売されています。
■宝珠山駅
住所:福岡県朝倉郡東峰村福井926-7
電話番号:0946-72-2312(東峰村ふるさと推進課)
アクセス:日田彦山線BRT ひこぼしライン「宝珠山駅」下車
日田彦山線BRT ひこぼしライン
カフェで一息ついたら出発!BRT駅に現れたのは、コンパクトで愛らしいフォルムのバス高速輸送システム「BRTひこぼしライン」。列車が走っていた線路跡がそのままBRT専用道になっているため、揺れも少なくスムーズ。車窓から流れる山々、畑などの風景が心をほぐしてくれます。
時刻表の隣にある路線図には、近くにある観光スポットがイラストで描かれています。次の目的地は「災害伝承館」。お隣の大行司駅で下車して向かいます。
東峰村災害伝承館|豪雨の記憶と、復興への歩みを伝える
2019年に開館した「東峰村災害伝承館」は、2017年7月5日の九州北部豪雨で起こった東峰村内の被害を記録し、後世へ伝えるための場所です。
2階の展示室には約30席の椅子が並び、当日の様子を記録した映像が上映されます。線状降水帯による記録的な豪雨、濁流と土石流、流されていく家々。美しい村を襲った災害の姿は、胸がぎゅっと締めつけられるほどの衝撃がありました。
同時に復旧・復興のために尽力した人々の姿、全国から寄せられた温かい支援など、希望の光を感じるパネル展示も。“風化させず伝えていく”役割を担っています。今では、水害を主とした防災についての学びも行っているそうです。
■東峰村災害伝承館
住所:福岡県朝倉郡東峰村宝珠山6410
アクセス:日田彦山線BRT ひこぼしライン「大行司駅」から徒歩約6分
山村文化交流の郷 いぶき館|石炭が育んだ暮らしと文化をたどる、山村の記憶の拠点
「東峰村災害伝承館」のすぐ近くにある「山村文化交流の郷 いぶき館」は、石炭から始まったこの土地の歴史をたどることができる、東峰村の文化拠点です。筑豊のように大きな河川がなく、石炭を船で運べない地域だったことから、この村には鉄道が敷かれました。日田彦山線は、石炭を北九州方面へ運ぶ重要なルートとなり、石油やガスが普及するまでこの地の暮らしを支え続けてきました。
いぶき館の建物自体も魅力のひとつ。飯塚市にある炭鉱王・伊藤傳右衛門邸の一部が移築されたもので、もとは住居として使われていた建物です。昭和初期に宝珠山炭鉱の幹部のための倶楽部(サロン)として使われ、その後は旅館「ほうしゅ山荘」として地域の人を迎え入れてきました。
施設内には伊藤傳右衛門の社会貢献活動、当時の写真や新聞、夫人だった歌人・柳原白蓮に関する資料なども展示しています。
この地域では小石原焼や高取焼が広く知られていますが、かつては宝珠山地区にも独自の窯が存在していました。昭和38年(1963年)の閉山に伴い、職を離れた炭鉱労働者たちが新たな生業として窯を立ち上げたのが宝珠焼のはじまり。しかし、宝珠焼の窯元は九州北部豪雨で損壊し、残念ながらその技と形は途絶えてしまっています。いぶき館では貴重な文化財・宝珠焼を鑑賞することができます。
■山村文化交流の郷 いぶき館
住所:福岡県朝倉郡東峰村福井2296-1
電話番号:0946-72-2232
営業時間:9:00~17:00(※最終入館は16:30まで)
休日:毎週火曜(火曜が祝日の場合は翌日)、年末年始
英彦山大権現社|庭園美と信仰が息づく、英彦山の奥座敷
特別な静寂が漂う英彦山は、古くから山岳信仰・修験道の霊山として名高い場所。なかでも「英彦山大権現社(ひこさんだいごんげんしゃ)」の庭園は、山岳修行の入り口としても機能していたといわれています。山あいの地らしく自然が豊かで、シーズンごとにまったく違う表情を見せてくれます。
境内に入って少し進むと目に入るのが、石だけで滝の流れを表現した枯滝石組(かれたきいわぐみ)の庭園。水を使わずに、石の積み方で“水の気配”を感じさせる、日本庭園の技が静かに息づいています。
境内にはお地蔵さまや観音さま、鐘楼が点在。御社は、大きな岩に寄り添うように建てられており、自然と信仰が同じ場所で呼吸をしているかのような荘厳さがあります。
庭園はよく整備されていて、険しい場所はなく、ゆるやかに歩けるのも魅力。秋には、山々を染め上げる紅葉の絶景が広がります。ほんの少し足を止めて自然に身をゆだねる——そんな時間を持ちたい人にぴったりの寄り道スポットです。
■英彦山大権現社
住所:福岡県田川郡添田町英彦山字樫ケ谷
電話番号:0947-85-0335
アクセス:日田彦山線BRT ひこぼしライン「彦山駅」から、添田町バスで「湯の山」下車、徒歩約19分
道の駅 歓遊舎ひこさん|遊んで、食べて、買って!旅の終点に立ち寄りたい憩いの駅
旅のラストは「道の駅 歓遊舎ひこさん」。大きな天狗の顔が目印の看板が迎えてくれ、日田彦山線BRT ひこぼしラインも停車するアクセス便利なスポットです。広々とした駐車場の横には、子どもが自由に遊べる「こどもわくわくパーク」があり、週末にはキッチンカーも登場。誰が訪れてものんびり楽しめる、地域の憩いの場所になっています。
館内に入るとまず目に飛び込んでくるのが、地元・添田町の新鮮な野菜の数々。調味料や加工品、おみやげも揃い、帰り際に“地のもの”をたっぷり持ち帰ることができます。
特に人気なのが、赤土の台地で育った「金の原野菜」。栄養豊かな土壌で育ったためミネラルが豊富で、「金の原野菜」のシールが目印になっています。冬は白菜・にんじん・大根が旬。白菜は巻きが良く、手に取るとずっしりした重みのある物がおすすめです。
地下60mから汲み上げた地下水を使ったクラフトビールやご当地サイダーは、旅のおみやげにぴったり。地元のお米で作られた「お米サイダー」というユニークな一本も並び、思わず試したくなるラインナップです。
高取焼のほか、地元の作家による陶芸品も販売されており、地域の手仕事と出合えるのも魅力です。
■道の駅 歓遊舎ひこさん
住所:福岡県田川郡添田町野田1113-1
電話番号:0947-47-7039
営業時間:物産館/9:00~18:00、山びこ食堂/11:00~16:30、中華 味菜/11:00~14:00、こどもわくわくパーク/9:00~17:00
もち工房/平日・土曜=9:00~14:00、木曜=9:00~12:00、日曜・祝日=9:00~8:00
アクセス:日田彦山線BRT ひこぼしライン「歓遊舎ひこさん」下車
石炭輸送の歴史を原点に、災害を乗り越え、新たな交通として生まれ変わった日田彦山線BRT「ひこぼしライン」。のどかな山あいの風景と、東峰村・添田町に息づく深い物語は、ゆったり巡るほど心に沁みる一日になるはずです。
■BRTひこぼしライン1DAY満喫フリーチケット
BRTひこぼしラインに乗って東峰村を巡るなら、「1DAY満喫フリーチケット」が便利。
添田駅〜日田駅間のBRT全線が終日乗り放題になるほか、お得な特典クーポン(約50種類)もセット。大人990円・小児490円で、スマートフォンアプリ「my route」から購入できます。
※掲載されている情報は2026年2月時点のものです。お出かけ前にはWebサイトや電話で最新情報をご確認ください。