【ふくおか祭前線】第2回 筑前木屋瀬宿場まつり-1

【ふくおか祭前線】第2回 筑前木屋瀬宿場まつり

地域やそこに住まう人々の魅力がいちばん輝く瞬間が、祭りです。そこには地域の歴史や先人の思い、今を生きる人々の未来への思いが詰まっています。この「ふくおか祭前線」シリーズでは、地域に息づく個性豊かな祭りと、それを支える人々の姿を紹介します。第2回は、北九州市八幡西区の「筑前木屋瀬(こやのせ)宿場まつり」です。

※「ふくおか祭前線」は福岡県広報誌「グラフふくおか」2026年度の連載シリーズです。


古き宿場町、踊れば新し。300年前のにぎわいが、通りによみがえる

澄み渡る秋空の下、江戸の面影を残す木屋瀬(こやのせ)の旧街道に、三味線と太鼓の音が響きます。三度笠をかぶった踊り手も、普段着の子どもたちも、唄と掛け声に合わせて通りを踊り歩き、見守る人たちにも笑顔が広がります。木屋瀬は、かつて長崎街道の宿場町として栄えた場所。「筑前木屋瀬宿場まつり」では、その旧街道が終日全面通行止めとなり、祭りの舞台になります。普段は非公開の旧家も数多く開放され、各家に伝わる貴重なお宝を見られるのも、この日ならではの楽しみです。


祭りの中心となる「宿場踊り」は、約300年前、木屋瀬の人々がお伊勢参りで覚えた伊勢音頭をもとに広まったといわれています。男性の三度笠や、女性の妻折笠(つまおりがさ)などの道中姿には、旅人が行き交った宿場町の記憶が重なります。また第1会場の須賀神社境内では、筑前各地や北九州各地から招かれた十数団体の踊り手たちが、地元に伝わる珍しい盆踊りを次々と披露。第2会場のこやのせ座では神楽が上演され、見どころ満載の一日となります。

【開催概要】
開催日:2026年11月1日(日)
場所:北九州市八幡西区木屋瀬の旧街道周辺、須賀神社、こやのせ座など
問い合わせ:093-619-1149(長崎街道木屋瀬宿記念館)
※催しの内容は変更になる場合があります。お出かけ前に最新の開催情報をご確認ください。


「月に踊り、花に唄い継いで」。町の暮らしから生まれた踊り

「月に踊り、花に唄い継いで300余年」。木屋瀬には、宿場踊りをそう言い表した先人の言葉が残っています。木屋瀬宿場踊り保存会の会長・藤嘉量さんに、踊りの歴史と、次の世代へつなぐ取り組みを聞きました。

藤 嘉量(とうよしかず)さん 木屋瀬宿場踊り保存会 会長


宿場まつりで踊る「宿場踊り」の原点

―「宿場踊り」はお伊勢参りがルーツだそうですね。

藤さん
江戸時代、みんなが伊勢神宮に行くようになった「お伊勢参り」のブームがありました。その時に木屋瀬の先人たちも行って、その道中で色々と見聞きして、伊勢音頭を覚えて帰ってきたっていうのが始まりなんですよね。ですから、「お伊勢参り」の道中姿(手甲、脚半、三度笠)で踊っているんです。そして昭和37年(1962年)には、県の無形文化財にも指定されました。


― 江戸時代からとは、宿場踊りは歴史のあるお祭りですね。

藤さん
およそ300年の歴史がありますが、初めから「宿場踊り」だったのではなく、本来は「盆踊り」なんです。正しくは「木屋瀬盆踊り」といいまして、8月の13〜15日にかけてその年に初盆を迎えた家々を一軒ずつ回り、家の庭先や通り沿いで大人も子どもも線香をあげ、その後に踊りが始まります。踊ること自体が供養なんです。木屋瀬には約1,000世帯が暮らしていますが、大体7~8割の方は踊れますね。
雨が降ってもやるんです。初盆に順延はありませんから。自分の記憶では、一度台風の時に当たりましてね。びしょ濡れになりながら踊りましたよ(笑)。帰省中の人や「知り合いの家なら踊ろう」と参加してくれる人もいて、多い時には100人以上が集まることもあります。みんなが踊ってくれることが故人への供養になりますし、そうやって町の暮らしの中で、ごく自然に続いてきた営みなんです。


踊りを支える唄と三味線を、次の世代へ

― 今も多くの町の人が踊れる理由や、継承するために取り組まれていることはありますか?

藤さん
毎年お盆に町のあちこちで踊るから、大体みんな踊れます。コロナ禍の前までは小学校に教えに行っていましたし、学校の運動会でもみんなで踊っていました。ただ、踊りを支える「地舞台(三味線、太鼓、唄い手)」をできる方が少なくなってきましたから、若い世代の育成が大事やということで「木屋瀬宿場踊り保存会」ができて、2015年頃から皆さんに声掛けを始めました。今日ここに集まってもらった皆さんは、三味線などを保存会で習った皆さんです。
野口大輔(のぐちだいすけ)さんは、三味線も歌い手も何でもやれる実力者。何でも一番上手い。子どもの頃に踊りから覚えて、今は三味線がメインです。本業は米屋ですが、祇園祭りの人形も作っているので、そういう点でも町にとって必要な人です。梶原亜矢子(かじはらあやこ)さんは、三味線と踊りを担当しています。お母さんがずっと踊ってくれとるから、子どもの頃から(踊りを)覚えとった感じです。柴田皐月(しばたさつき)さんは、三味線もできるし、神社で巫女もされていましたから、小さい時から関わっています。


― 皆さん、三味線は子どもの頃からできていたんですか?

野口さん
いやいや、この保存会で教えてもらって、8年とか10年とか練習を重ねます。高齢化で弾ける人が減ってきて、藤会長が「ここで三味線と唄を覚えんか」と声掛けしてくれたのがきっかけです。

藤さん
今では三味線をできるのが10人以上、唄い手も10人ぐらいいて、地舞台がずらっと揃った姿は迫力ありますよ。また「こども舞台」といって、保存会で子どもたちの育成もしています。それと、地域を越えて人材発掘したのが飯盛優斗(いいもりゆうと)さん。隣町から来てくれとるんですけど、そもそもミュージシャンで。津軽三味線ができるだけじゃなく、いろんな音楽に合わせて三味線を弾ける。ここでもすぐに馴染んでいます。


― 皆さんの「宿場踊り」の思い出を聞かせてください。

梶原さん
私は母について盆踊りをちっちゃい頃からやってきたんです。その中で踊りを遊ぶように覚えてました。

野口さん
このパターンは多分多いと思うんですよ。親御さんについて子どもが踊り出して、覚えて大人になっていく。お盆だし、最後にお菓子もらえてね(笑)。

梶原さん
ジュースもらって、お菓子もらって、嬉しいんですよ。

野口さん
盆踊りの大人にはビール。家を回る度に踊りがだんだん早くなる(笑)。

柴田さん
私は子どもの頃は盆踊りに参加してないですけど、隣の亜矢ちゃん(梶原さん)に誘われて三味線から覚えたんです。ただ家が神社のお世話をしていて、小さい時から巫女をしていたので、祇園山笠とか町の祭りにはずっと関わっていました。

藤さん
柴田さんは根っからの地元の子なんです。祭りや行事には、地元のこんなつながりが欠かせないんです。

飯盛さん
僕は引きずり込まれたんです(笑)。「音楽をやってる分、覚えるのが早い」って褒められて。三味線も師匠にマンツーマンで教えてもらっているし、もう楽しくて。結局、地元同然に一年中、木屋瀬に呼んでもらえるようになりました。


― 世代をつなげる、木屋瀬らしい祭りなんですね。

藤さん
そうですね、観光だけでもいろんな人がこの町に来てほしいと思います。来てもらうこと自体が嬉しいですし、地元の人はみんな木屋瀬が大好きで、この祭りに関わる人たちは来てくれる皆さんをもてなしたい気持ちがいっぱいなんです。


旧街道いっぱいに広がる総踊り

―11月の宿場まつりでは、どんなところを見てもらいたいですか。

藤さん
やはり、プログラムの最初と最後に行う総踊りですね。旧街道を舞台に、唄と三味線、太鼓に合わせてみんなで踊ります。各地の伝承盆踊りや、こやのせ座で披露される神楽も楽しんでほしいです。須賀神社境内には筑前や北九州各地の踊り手が集まり、こやのせ座では豊前三毛門(みけかど)神楽、英彦山津野(ひこさんつの)神楽、合馬(おうま)神楽が上演される予定です。旧街道を歩き、踊りや神楽にふれながら、かつて旅人でにぎわった町の一日を楽しんでほしいです。


まだある秋の祭前線

  • 苅田山笠(苅田町)

    苅田山笠(苅田町)

    2026年9月20日(日)~10月4日(日)
    3度姿を変える勇壮華麗な「喧嘩山笠」。

    もっと見る
  • 御賑会(おにぎえ)(柳川市)

    御賑会(おにぎえ)(柳川市)

    2026年10月10日(土)〜12日(月・祝)
    水郷のまちで200余年。太鼓とドラが祭りを揺らします。

    もっと見る

  • 金田・神崎山笠競演会(福智町)

    金田・神崎山笠競演会(福智町)

    2026年10月24日(金)・25日(日)
    最速の囃子(はやし)が鳴り響き、町が光と熱気に包まれます。

    もっと見る
  • 山誉祭(やまほめさい)(福岡市)

    山誉祭(やまほめさい)(福岡市)

    2026年11月15日(日)
    海の民が山を誉めたたえる古式ゆかしき神事です。

    もっと見る

福岡県広報誌「グラフふくおか」

写真を主体として、福岡県の今の魅力や市町村の取り組み、地域で頑張っている皆さんの姿などを伝える季刊誌。「ふくおか祭前線」は2026年度の連載シリーズです。県庁1F総合案内所や各市町村役場、図書館、福岡市情報プラザ(福岡市役所1F)、アクロス福岡2F文化観光情報ひろばなどで配布されています。


SHARE

次に読みたい特集記事

当サイトでは、利便性の向上と利用状況の解析、広告配信のためにCookieを使用しています。サイトを閲覧いただく際には、Cookieの使用に同意いただく必要があります。詳細はクッキーポリシーをご確認ください。
ページトップへ