【サイクル福岡】ダムサイクリング①ます渕ダムと平尾台カルスト-1

【サイクル福岡】ダムサイクリング①ます渕ダムと平尾台カルスト

北九州地域でサイクリストにおすすめのダムは、なんと言っても「ます渕ダム」。1974年に完成した歴史あるダムで、湖岸にはサイクリングロードが延びています。小倉や行橋の市街地から近いダムですが、驚くほど豊かな自然が待っています。非日常感が待つ「味見峠」や絶景の「平尾台」と組み合わせれば、走りごたえは抜群です!


スタート・ゴールは行橋駅

ます渕ダムは北九州市小倉南区の紫川上流にあり、平野から近いためアクセスルートは多様。今回は、輪行での移動はもちろん、カーサイクリングの拠点としても選びやすいJR行橋駅をスタート&ゴールにしたルートを紹介します。行橋駅はJR日豊本線のほぼすべての列車が停車し、全国的にも珍しいカルスト台地・平尾台も近いため、変化に富んだサイクリングが楽しめます。

「暮らしやすいまち」として知られる行橋は、戦国時代きっての智将、黒田如水(官兵衛)や勇将の後藤又兵衛ゆかりの地。街と自然がとても近いので、西へ向かって走り出すとすぐに静かな農村が広がり、行く手に平尾台から延びる尾根と障子ヶ岳の山並みが迫ってきます。 


「せん助さん」にご挨拶して味見峠へ

県道64号に出てみやこ町に入ると、ほどなくして現れるのが仙人神社。地元では「せん助さん」と親しまれています。江戸時代後期に実在した人物で、お酒好きの陽気な人だったとか。お酒をお供えし、「一杯おあがりください。私もいただきます」と酌み交わせば、願い事がかなうと言われる微笑ましい神社です。サイクリング中なので飲酒はいけませんが、道中の無事を祈ってお参りしましょう。

クロスバイクやグラベルバイクなど、太めのタイヤを履いているなら、ぜひ味見峠へと至る旧道へ。約4kmの野趣あふれる未舗装路で、途中500mほどは荒れた路面を押し歩くなど、非日常的な体験ができます。標高240mの味見峠は障子ヶ岳への登山口にあたり、桜公園として整備されています。解説板には「アジミ」という不思議な地名の由来も。峠で何かを味見したのか、安曇(あずみ)と呼ばれる海洋民族が訪れた地なのか……ぜひ、ご自身で確かめてください。


大正時代の駅舎が現役!採銅所駅

味見峠を越えると香春町(かわらまち)。少しだけ筑豊地域に入ります。県道64号は国道322号と交差しますが、ひとまず国道には入らず、採銅所(さいどうしょ)駅に至る細道を進んでみましょう。JR日田彦山線に行き当たったら進路を北へ。旧街道らしい立派な町屋を眺めながら進むと、ほどなくして採銅所駅が現れます。大正4年(1915年)の開通時から現役という駅舎は、寺院のような寄棟造りでありながら洋風でもあり、大正モダンを実感できます。移住や交流の拠点としても活用されています。


いよいよ始まるサイクリングロード

採銅所駅を後にして国道322号を北上すると、ゆるやかな上りで金辺に至ります。交通量は多いものの、トンネル内の歩道は広く不安はありません。トンネルを抜けると、1kmほど勾配10%前後の坂が続くので息が切れますが、しばらくの辛抱。道が下りに転じると、ようやく「鱒渕サイクリング道路」という標識が。ここからは待望の平坦なサイクリングロードが、ます渕ダムの湖畔沿いに約7km続いています。

秋には落ち葉や枯れ木で路面が覆われた区間もあるので、のんびり進んでいきましょう。タイヤと落ち葉が奏でるサクサクという小さな音がよく聞こえるほど、静けさに包まれた道です。


まるで古城?巨大なます渕ダム

ぱっと視界が広がると、一見すると橋のような堤体が出現。ます渕ダムの上流にある頂吉(かぐめよし)ダムです。この頂吉ダムを渡れば県道に戻り、渡らずに自転車道を走り続けても、ます渕ダムの堤頂で県道と合流します。どちらのルートを選んでも、まるでリアス式海岸のように複雑な湖畔の風景を思う存分に楽しめます。

そしていよいよ、巨大なます渕ダムとご対面。堤体の高さ約60m、長さは約205.5m。息を呑むほど壮大な多目的ダムです。建造から半世紀以上が経ち、古城のような風格を感じさせます。堤頂の外れにあるダムの管理出張所でダムカードがもらえます。

下流までサイクリングロードが続いているのも、ます渕ダムの大きな魅力。スロープ付きのループ歩道橋を降りれば、堤体を間近に見上げることができ、重力式コンクリートダムならではの大迫力!サイクリングロードは、紫川に沿って道原(どうばる)の集落まで続いています。橋の銘板を見ると、建造されたのは1986年。ダム本体も道も橋も、昭和の偉大な遺産なのです。


悲劇が生んだ眼鏡橋と古い峠のトンネル

道原から先は一般道を紫川に沿いにしばらく進むと、石造りの二連アーチ橋が現れます。1919年に完成した春吉の眼鏡橋です。この橋ができる前、板切だけだった橋から少女が転落して亡くなる事故があり、その悲劇を繰り返さないよう、地元の人々が出資して立派な眼鏡橋を造ったそうです。農村の歴史に想いを馳せながら、渡っていきましょう。

眼鏡橋を渡り、農家の軒下をかすめるような細道を上りつめると、昭和初期に造られた櫨ヶ峠隧道(はぜがとうげずいどう)が待っています。このトンネルを抜けると、ます渕ダムの手前で分かれた国道332号に再び出ます。ダムからここまで平坦と下り基調の道が続き、上りの疲れも癒えている頃。往路とはルートを変え、県道28号で平尾台を越えて行橋に戻れば、達成感が倍増することは間違いありません。


雄大な平尾台カルストへ

石灰岩が侵食されて生まれた平尾台。標高約400mまで上るので大仕事ですが、30もの急カーブがあるおかげで勾配は比較的穏やか。ギヤを軽くしてマイペースで進みましょう。登りきると、苦労が吹き飛ぶほどの絶景と爽やかな風がサイクリストを迎えてくれます!初夏には緑のじゅうたん、秋から冬にかけてはススキに覆われる平尾台は、北九州を代表する人気スポットです。

平尾台の東側は国定公園ですが、西側では日本最大級の石灰石鉱山が稼働し、古くからセメントを作っています。独特の山容を見せる平尾台は、コンクリートダムの故郷といえるかもしれません。行橋まで距離10kmという案内標識が現れたら上りは終わり。その後は、ほとんどペダルを回さずに平尾台から下ることができ(くれぐれもスピードは控えめに)、感覚的にはあっという間に行橋駅に到着します。お疲れ様でした!


ルート地図はこちら


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