【サイクル福岡】ダムサイクリング④新たな聖地・五ケ山ダム-1

【サイクル福岡】ダムサイクリング④新たな聖地・五ケ山ダム

2017年に完成、2021年から運用を開始したばかりの五ケ山ダム。福岡地域屈指のヒルクライムルートとしてあっという間にサイクリストに定着しました。佐賀との県境へ延びる天空の道を紹介します。


新幹線の聖地、博多南駅からスタート!

五ケ山ダムは東西南北どこからでもアプローチできますが、今回は福岡県側の最寄駅・博多南駅をスタート&ゴールとするルートを設定。山陽新幹線の車両基地の一角にある駅で、もともとは回送列車のみ走っていたのですが、那珂川市民の強い要望で旅客が利用できるようになりました。博多駅からの乗車時間は9分、わずか330円で新幹線に乗れる区間として有名です。ホームからは車両基地にずらりと並ぶ新幹線を見渡すことができ、鉄道ファンならずとも必見!こうした駅からサイクリングを始めるのも一興ですね。

五ケ山ダムへ至る道は単純明快。博多から神埼市(佐賀県)を経て柳川に至る国道385号がメインルートです。迷う心配もほとんどありませんが、せっかくなので序盤は県道を選び、軽いアップダウンで王塚台を抜け、「裂田溝」(さくたのうなで)を目に納めてからダムを目指しましょう。


古代の水路「裂田溝」

裂田溝は日本最古の歴史書「日本書紀」に登場する水路で、古代から栄えた福岡地域を象徴する存在。現在も利水・治水に活用されています。裂田溝を作らせたのは、4世紀後半に実在した神功皇后(じんぐうこうごう)といわれています。日本書紀によると、皇后が天に祈ると岩が裂け、水が通ったとか。祈りの際に皇后が立った「御立石」が裂田溝のかたわらに今も残り、その横をスポーツ自転車に乗ったサイクリストが駆け抜けていきます。
皇后の祈りが生んだ裂田溝と、最新のIOTを活用して建設された五ケ山ダムに共通するのは、水を人々の生活に役立てたいという切実な願いなのでは…などと妄想しながらペダルを回していると、いつの間にか走行距離が延び、標高も上がっていたりしますよ。


南畑ダムと肥前筑後街道

裂田溝を過ぎ、道なりに進むと国道385号に合流し、徐々に上り坂が始まります。1911年に運転を開始したレンガ造りの南畑発電所を過ぎると、いっそう急勾配に。穏やかだった那珂川の流れもしぶきを立て、筑紫耶馬渓(ちくしやばけい)と呼ばれる渓谷美を見せてくれます。

次第に川筋を離れて標高300m弱まで上昇し、うっそうとした竹林を抜けると、いかにも年季の入った重力式コンクリートダムが出現。1965年に竣工した南畑ダムです。堤高は63.5m。本命(?)の五ケ山ダムに比べると低くて古色蒼然としたダムですが、初見なら十分に圧倒される迫力です。

南畑ダムは、国道の前身である肥前筑後街道の古い道筋との合流地点にあります。旧街道はハイキングルートとして整備されており、自転車での通行は無理ですが、杉の巨木が茂るトレイルが国道からも垣間見え、いにしえの険しい旅を想像させます。上りとはいえスーッと進むことができる国道と自転車に感謝しつつ、五ケ山ダムを目指しましょう。


宇宙からも見える!?壮大な五ケ山ダム

南畑ダムの堤体から2kmほど進むと、国道の雰囲気は一変。路面が真新しくなり、足がすくむほど高く長大な橋が谷をまたぎ、ぐんぐん高度を上げていくと、ついに五ケ山ダムが姿を現します。堤高は102.5m、長さは556mという圧倒的な規模の重力式コンクリートダムで、堤体の左右が下流に向かって湾曲した優美な姿は「鶴翼」と称されます。しまなみ海道の長大な橋梁群と比べたくなるような荘厳さです。

周辺は「五ケ山クロス」と名付けられたアーバンアウトドアの拠点。モンベルのショップやキャンプ場、展望台などがあり、標高約400mの山奥とは思えないほどの都会感にあふれてます。ショップ前のバイクラックには、いつ訪れても多くの自転車が休んでおり、ここではクルマやオートバイよりも自転車が主役なのです。


県境を進んで脊振ダムへ

五ケ山ダムできびすを返し、もと来た道を戻るサイクリストも多いのですが、ここでは旅情重視で先へ向かいましょう。佐賀県との境をかすめる県道136号を進んでいきます。再び上りとなるので足がプルプルしてくるかもしれませんが、しんどい区間は2kmほど。那珂川市と福岡市の境にある「背振少年自然の家」に着いたら右折し、脊振ダムに通じる細道へ。1976年に完成した古いダムです。五ケ山ダムと違って訪れる人はまれで、どこまでも静かな湖岸を半周できます。標高は550mほど。これで那珂川に造られた3つのダムを訪れたことになります。


かつてはメジャーな峠越え

湖岸を離れて県道に戻ったら、さらなる上りで板屋峠へ。180度向きを変えるヘアピンカーブが延々と続き、永遠に上っていく錯覚に陥るかもしれませんが、脊振ダムから峠までは2km弱。尾根をV字に削った小さな切り通しに、「標高653m」と記された青い標識が立っています。なぜが温度計がぶら下がっているので、“下界”より格段に低い気温を知ることができます。
この板屋峠は、福岡市のサイクリストには練習コースとして知られていましたが、五ケ山ダムが完成してからは「裏ルート」といった位置付けになりました。

ここまでためにためた標高を思う存分に使って、下界へ戻りましょう。33ものヘアピンカーブを曲がりきると、ようやく道は直線的に。広がる谷に椎原の農村が見えてくると、心底ほっとするでしょう。手打ちそばの名店がありますので、冷えた体を温めることもできます。下りきって県道56号に出ればコンビニもあり、那珂川と博多の街はもうすぐそこ。お疲れ様でした!


ルート地図はこちら


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