九州オルレ 宗像・大島コース 歩き出す前から特別、世界遺産に触れられる海と山の旅-1

九州オルレ 宗像・大島コース 歩き出す前から特別、世界遺産に触れられる海と山の旅

歩き出す前からスペシャルな旅路を楽しめるのが「宗像・大島コース」です。
離島という立地に加え、世界遺産「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」を構成する信仰の地でもあります。天候次第では、神宿る島「沖ノ島」を遥かに拝むことができるというのも、ここだけの特別感。宗像大社の中津宮や沖津宮遙拝所、砲台跡といった島の歴史をたどれば、いつの間にか海から山までを満喫できることでしょう。海風に吹かれながら、非日常を感じる唯一のオルレを満喫しましょう。


コース情報

 

【行動時間】 約4~5時間
【高低差】  200m
【距離】   11.4㎞
【難易度】  中~上級


神湊港からフェリーに乗ります。大島行きは片道570円(小人290円)


はじめの一歩はフェリー

宗像・大島コースは、現地にたどり着くまでのアクセスから、他の地域と大きく異なります。はじめの一歩は、まず神湊港からフェリーに乗ること。30分もかからない船旅ですが、展望デッキで波しぶきを浴び、波に揺られるだけでも旅情が感じられます。

港を離れるだけで旅っぽくなってきました。雲の間からこぼれてくる陽光は神々しくも感じられます。

大島に着く頃には「いい旅だったなあ」と振り返りそうになります。フェリーのおかげで、まだ歩いてもいないのに旅をしてきた気分です。


ターミナルに降り立つと、大島にそびえる御嶽山が迎えてくれました。ここからが本当のスタート。大島の大地を踏み締め、スイッチを切り替えます。

山の手前に鳥居が見えます。その奥には「宗像大社 中津宮」があります。


すぐに歩き出すのもいいですが、ちょっと寄り道をします。ターミナルの側にある宗像漁協大島直売所「さよしま」へ。海の幸や甘夏など大島の旬を手軽に求められます。
先は長いので、まずは行動食を調達します。持ち運びやすさを重視して、軽量なものを3品選びました。大島の塩を使った最中、塩飴、酢わかめを買いました。ほかにも地元の産品がいっぱいあります。景色のいいところを見つけて地元の食を楽しめば、おいしさも、旅の楽しさも倍増するはず。

お買い物したら綺麗な貝殻がもらえました。


飲食店は、フェリー乗り場のある島の東側にしかないため、食事を済ませるなら行動開始前にどうぞ。ただし、大島への到着時間が早い場合は、開店しているお店が少ないかもしれません。

今回は、午前10時台から開店していた「壽や 三郎」で新鮮な魚介がお皿いっぱいに乗った刺身定食(1,500円)をいただきました。採れたての味は言うまでもありません。


伝説と絶景に触れる中津宮

腹ごしらえを終え、ようやくスタート。目印のリボンをたどると5分ほどで、宗像大社の中津宮に到着します。御祭神は、天照大神の三女神のひとり、湍津姫神。宗像大社は沖津宮、辺津宮を加えた三つの社からなる日本最古の神社の一つです。鳥居の前で一礼して、由緒ある神域に足を踏み入れます。

目印はリボンだけでなく、地面や石に書かれていることもあります。


最初は海辺なので起伏もなく、あっという間に中津宮に到着。

境内を流れる小川に「天の川」という表記がありました。実は、中津宮が七夕伝説の発祥の地とされています。大島は大陸から近く、中国文化が海を渡って入ってきていたことを考えると、発祥というのもうなずけます。


  • 夜空にかかる「天の川」とは違い、中津宮で控えめに流れています。

  • 天の川をはさんで向こう側には織女がまつられていました。


牽牛神社は天の川の向こう岸、中津宮の隣です。

世界遺産の構成資産であり、日本最古の神社。牽牛と織女の言い伝えまで残されているとは、並大抵ではありません。そうした情報がなくとも、とても気持ちのいい空間でした。


気持ちのいい中津宮の参道。心が洗われます。
本殿に向かう石段の途中で後ろを振り返った時のことです。参道から海までが光の道のように輝いていました。何気ない瞬間に、神々しいほどの美しさが隠れていました。

石段を登りきった先にある本殿でお参りを済ませます。七夕伝説にちなみ縁結びのご利益があるそうです。


お参りを済ませた後、左奥にある坂を下りていくと湧水「天の真名井」に到着。長寿の効能があるといわれる霊水は口当たりが柔らか。


神宿る島を拝める登山

順路と書かれた看板に従い、中津宮の裏手に回りこみ、大島の最高峰である御嶽山を目指します。ここから山頂に続く山道は、コースで一番の難所となります。足元は多くの人が踏み固めてきた気持ちのいい登山道です。

景色を楽しむ余裕がない人は、ペースが早すぎる証拠。先はまだまだ長いです。ゆったり息を整え、緑の美しさを感じながら、マイペースに進みましょう。


底から隆起した「山」だった大島は、島全体がアップダウンの連続です。もしも難所で体調不良を感じたり、ケガをした場合は、舗装路から引き返すこともできます。基本的には、近くの舗装路をたどれば、港に帰ることができるコースです。自分の体力や体調に合わせて、ショートカットをするのも手です。

  • 山頂部にある御嶽神社の鳥居と参道。
    ここからは舗装されていない登山道が続きます。

  • 神社の参道というと針葉樹を思い浮かべがち。
    自然林だと新鮮です。


海岸からの標高差200mを登りきると、ご褒美となる絶景が待っています。
山頂部からの気持ちのいい海景に、思わず笑顔がこぼれます。
この日は快晴だったので、展望台から、神宿る島「沖ノ島」を眺めることができました。「沖ノ島」は雨上がりの空気の澄んだ時が一番よく見え、天候によっては霞んでしまうこともあるそうです。幸運を授かれたことを喜び、御嶽神社でも両手を合わせてきました。


  • 水平線の奥にうっすらと見える沖ノ島。

  • 遠く福岡市内の街並みも見えます。


山頂部の御嶽神社は中津宮の奥宮。神秘的な雰囲気に包まれていました。


日本とは思えない景色が連続

展望を思う存分に楽しみ、静かな林道を下ります。ここからは大きな登りも、急な下り坂もありません。道のりと同じ穏やかな気持ちで、島の北部へと足を伸ばします。

北側には、水を補給できる場所はほとんどありません。暑い時期は、多めに持っていくように心がけたいです。

御嶽山の登山道出口を右に折れ、遊歩道との接続点まで2.5km。御嶽山を登った後なので、なんの苦もなく、あっという間につきました。

  • アスファルトだと、歩くペースが自然と早くなります。

  • 途中でイノシシが泥を浴びる「ヌタ場」もありました。見通しの悪い場所で出会い頭に遭遇しないよう、大きな音や声を出します。


奥に見える建物の方まで進んでいくと…
草原の中に伸びている遊歩道の奥には、背の高い風車展望所。赤みのある屋根と青空や海とのコントラストがきれいで、どこか別の国に迷い込んだかのよう。どこから写真を撮っても絵になる風景です。

風車展望所近辺では春は菜の花、夏はヒマワリ、秋はコスモスが来る人を楽しませてくれるとか。


  • ちょうど乗馬体験をされている方と出会い、ますます日本にいることを忘れてしまいそうな異空間になりました。

  • 水平線を眺めながら馬に乗るなんて、決して忘れないすてきな体験になりそうです。


風車の近くには、1936年に作られた砲台跡もあります。大砲が備えられていた部分は周囲よりも一段低くなっていました。第二次世界大戦で使われることなく役目を終え、コンクリートの基礎部分だけが残され、今もポッカリと口を開けています。

砲台跡の傍らにある観測所も当時の姿を伝えています。敵艦の距離や速度を測るために設けられた監視窓が特徴的です。とても横に長く、そこから見る海は水平線が強調されて、不思議な見え方がしました。

観測所から見る玄界灘も特別な美しさがありました。


観測所の上は丘になっていて、なぜかクラーク博士のポーズ。少年よ大志を抱け?


海を眺めながらのおやつタイム。先ほど買った、宗像最中を頂きます。疲れた体に最中の甘さが染み渡る。大島の塩をねりこんだあんこと最中が別々に包装されているのでパリパリ&しっとり。


絶景を堪能した後は、クライマックスとなる「沖津宮遙拝所」へ。島への上陸が禁じられている沖ノ島を拝むために設けられた場所です。「神宿る島」というのは、島そのものが御神体、信仰の対象であり、厳しく守られています。

よく見かけるのは、石段を登って正面にある社殿ですが、沖津宮遙拝所では沖ノ島を背にしています。

水平線の奥にある沖ノ島をじっと見つめます。はるか昔の人たちも同じように眺めていたことでしょう。そして、沖ノ島に思いを馳せ、祈りを捧げてきたのです。今も同じことができ、同じように感じるというのは不思議な感覚です。


フェリーの乗船時刻に間に合うように、帰路につきましょう。
急ぎの時は、沖津宮遙拝所の駐車場から右に曲がらずに、南側へと歩けばショートカットができます。大島地区コミュニティセンターの先にある十字路も真っ直ぐ進むと、早く港へと戻ることができます。

時間に余裕があるなら、南側の海岸線に出て、海風に当たるのもいいですね。朱色の鳥居が映える「夢の小夜島」は、干潮時には歩いて参拝することができます。同じく潮が引いていないと渡れない「干洲」は、世界遺産のモン・サン=ミッシェルのよう。最後まで大島の自然と美しい景色が続きます。

夢の小夜島は登って、ほこらを拝むこともできるそうです。


  • 運良く干洲を渡ることができました!

  • 干洲でもお参り。最後まで神様に手を合わせる歩き旅でした。


沖津宮遙拝所からの帰路は、うっかりしていると、目印を見落として知らずにショートカットしてしまうことも。最後までオルレコースを歩き通したいという方は、気を引き締めてください。恥ずかしながら話し込んでいて、素通りしていました。ほかの場所でも同じですが、目印を見つけた時は、指をさしたり、声に出したりして確認するのが確実です。うっかり道を間違えて進んでしまうと、けっこうな距離を戻るハメになることもあります。


ターミナルに戻って、フェリーを待つ間に、大島の甘夏を使ったジェラートで疲れを癒しました。


海抜ゼロメートルから最も標高の高い御嶽山までを歩き、大島の南北を縦断。古来、大切に守られてきた信仰の場所を巡り、歴史や自然にも触れるという盛りだくさんな旅でした。思い残すことなく満喫したはずが、フェリーが港を離れると、少し寂しい気持ちに。行きと同じ船なのに、まったく真逆の気持ちです。後ろ髪を引かれ、また来ようと思い、島を離れたのでした。


これから(春)の見どころ

  • 飛来するムラサキマダラ 提供:宗像市

    アサギマダラの飛来

    アサギマダラは春から夏にかけて南から北への移動する「渡り」をする蝶です。宗像市には4月から5月頃飛来します。群れで飛来する美しい翅模様の蝶に会えるかも。

    【写真】飛来するムラサキマダラ 提供:宗像市

  • 風車展望所・砲台跡

    風車展望所・砲台跡

    歴史を感じさせてくれる風車や砲台跡の周辺では、春になると菜の花畑が色鮮やかです。夏はひまわり、秋はコスモスなど四季の移ろいを楽しむことができ、玄界灘を一望できるロマンチックなスポットです。

    もっと見る

スポット情報

■Kitchen KAIKYU
住所:福岡県宗像市大島901-9(Google Map
電話番号:0940-72-2022
https://www.kaikyu.jp/
美しい海を眺めながらできたてのホットサンドが楽しめるカフェです。予約もできるので道中のお弁当も注文できます。

■MUSUBI CAFE
住所:宗像市大島773(Google Map
電話番号:090-5924-9491
https://oshimacafe.com/cafe/musubi-cafe/
海水浴場を前に海を一望できるおしゃれなカフェです。大島名産の甘夏で作るシェイクやレモネードが人気です。不定休なので訪問の前に連絡を。

■春乃日住所:福岡県宗像市大島1876(Google Map
電話番号:070-8310-0879
https://meshidokoro-harunohi.com/
漁師の営むお食事処。島で取れた新鮮な素材を活かした料理でもてなしてくれます。

■壽や 三郎
住所:福岡県宗像市大島1645(Google Map
電話番号:0940-72-2632
地魚を使ったお刺身定食屋や海鮮丼、旬の魚で贅沢なランチが食べられます。

■カナディアンキャンプ大島牧場
住所:福岡県宗像市大島2804-1(Google Map
電話番号:0940-62-1912
https://ccrohshima2020.wixsite.com/mysite-1
風車展望所・砲台跡近くにある21,000㎡の養老馬・育成牧場。初心者でも乗馬体験などが楽しめます。オルレ客のためにウォーターサーバーを設置してくれています。(お志もお忘れなく)

■大島交流館
住所:福岡県宗像市大島901-4(Google Map
電話番号:0940-72-2797
大島交流館公式サイト
世界遺産「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」について学ぶことのできる体験施設です。島の魅力を学んでコースをめぐると、オルレがより楽しめます。

■宗像漁協大島直売所さよしま
住所:福岡県宗像市大島1809-8(大島港渡船ターミナル前)(Google Map
電話番号:0940-72-2666
https://www.sayoshima.jp/
フェリーのターミナルの側にあり、大島産の海産物が購入できます。旅の軽食やお土産購入の場所として重宝されています。


スタートまでのアクセス

福岡空港、博多港→<地下鉄>→JR博多駅→<鹿児島本線小倉行>→JR東郷駅→<西鉄バス神湊波止場行>→神湊港フェリーターミナル→<市営渡船大島行>→大島港フェリーターミナル

北九州空港→<空港エアポートバス>→JR小倉駅→<鹿児島本線博多行>→JR東郷駅→<西鉄バス神湊波止場行>→神湊港フェリーターミナル→<市営渡船大島行>→大島港フェリーターミナル


注意するポイント

■ルートの注意点
・補給ポイントは港周辺のみ。お弁当や飲み物は事前に準備した方がよい。
・宗像大社中津宮から御嶽山(展望台)までは登りが続く。
・山間部の林道ではイノシシに注意。イノシシは警戒心が強いので音をならすことでこちらの存在をアピールするとよい。
・パンフレットの設置場所:神湊港、大島渡船ターミナル

■服装・装備
・歩きやすいスニーカー
・20~30Lのリュック
・夏場は帽子や汗拭きタオル
・動きやすい服装、登山用でなくともスポーツウェアでOK
・簡易的なレインウェア、傘やカッパ
・宗像・大島オルレのパンフレット
・飲み物。夏場は多めに持って行きます。ルート途中で補給できないので事前に準備しておきましょう。

■あると歩くのが楽しくなる装備
・おやつや軽食
疲れた時に食べたりすると元気が出て、また歩きたくなります。
・双眼鏡や顕微鏡
持っていくと小さな発見があります。鳥や景観を眺めたり、植物を調べたり。天気がよければ周辺の島や福岡市内を見ることができます。
・現在位置の把握、GPSなど
スマホのアプリ「YAMAP」。地図読みが苦手な人は自分の現在地がわかるのでおすすめ。

■エスケープ
パンフレットの地図に記載はありませんが、舗装路を使って戻ることもショートカットも可能です。
砲台跡から大島ターミナルへは、大島観光バス「グランシマール」「みあれ号」で行き来できる(詳細はホームページhttps://www.muna-tabi.jp/k002/070/20190530120101.html)。それ以外の区間では、タクシーを呼ぶのもよいでしょう。

【タクシー】
宗像西鉄タクシー/TEL:0120-495-889
宗像グリーンタクシー/TEL:0940-33-3303
みなとタクシー/TEL:0940-33-1331
新星交通/TEL:0940-36-2138
みなとタクシー大島営業所/TEL:080-1741-3710


オルレのマナー

1.民家の庭にみだりに入らない。
2.人や個人のものを撮影するときは同意をもらう。
3.ゴミは必ず持ち帰る。
4.道沿いの農作物を勝手に採らない。
5.道端に咲いている花や木の枝を採らない。
6.民家付近等で大声で叫んだり、騒いだりしない。
7.次に訪れる人のために、リボンを持ち帰らない。
8.道案内の看板にはさわらない。
9.未舗装の道は、決まった経路を通る。
10.風景を楽しみながらゆっくりと歩く。
11.車道を歩くときは、車に気をつけて歩く。
12.コースから外れた急傾斜地等での危険な行動は控える。
13.途中出会う旅行者や地元住民の方々と笑顔 で挨拶を交わす。


宗像・大島コースお問合せ

宗像市商工観光課/TEL:0940-36-0037
おおしま観光案内所/TEL:0940-72-2226


九州オルレ宗像・大島コースについて

テキスト:若岡 拓也(IN THE FIELD)
写真・ディレクション:村上 智一(IN THE FIELD)
 


公開日:2022年3月10日
最終更新日:2023年1月25日


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