【サイクル福岡】ダムサイクリング③廃線跡の道と日向神ダム-1

【サイクル福岡】ダムサイクリング③廃線跡の道と日向神ダム

筑後地方の八女市は福岡県内で2番目に広く、南は熊本県、東は大分県に接しています。そんな筑後地方の最深部で待っているのが、日向神(ひゅうがみ)ダム。人気のパワースポット「ハート岩」を擁する神秘的なダムです。道中には廃線あり、古い町並みあり、茶畑ありと、変化に富んだロングライドが楽しめます。


空飛ぶ筑後のワンちゃん!

日向神ダムの立地は山深く、最寄駅は約35km離れたJR鹿児島本線の羽犬塚(はいぬづか)駅。筑後市の中心駅です。久留米市街まで約13kmなので、健脚サイクリストは久留米から走り出してもいいかもしれません。逆にカーサイクリングの場合は、黒木(八女市)にクルマを置いておけば、走行距離をぐっと短縮できます。スタート&ゴール地点は個々人の都合や好みで工夫してください。

羽犬塚駅では、豊臣秀吉の九州遠征を阻んだといわれる「羽犬」のりりしい像が迎えてくれます。キメラのように背中に翼を生やした姿は、どことなくユーモラス!秀吉にかわいがられたという真逆の伝説もあり、興味深いですね。


「バルビゾンの道」は国鉄矢部線の跡

九州新幹線の高架下から、緩いカーブを描いて南東へ延びる2車線の道。1985年に廃止された国鉄矢部線の跡を活用した一般道です。鉄道ファンならピンとくる滑らかな線形で平坦な道が続きます。八女市の中心街・福島まで来ると、沿道に鉄道公園が登場。踏切警報機とレール、筑後福島駅の駅舎が保存されています。駅舎の前でのどかにゲートボールに興じている年配のご婦人方…かつての矢部線を利用していたかもしれませんね。

矢部線の大部分の区間は、郷土の洋画家・坂本繁二郎氏にちなんで「バルビゾンの道」と呼ばれています。繁二郎がフランスのバルビゾンに留学した際、八女の風景に重ねたのが由来だとか。八女市の東西を結ぶこの道もサイクルロードレース「ツール・ド・九州」の舞台となり、サイクリストには知名度が大きく上がりました。八女福島には白壁の町並みとディープなスポットがあるのですが、それは復路のお楽しみ。まずはダムへ向かって進んでいきましょう!


めくるめく廃線旅情と終着駅

バルビゾンの道は県道52号に吸収され、のどかな丘越えにかかります。周辺は日本最高級の玉露と称される八女茶の産地。沿道には使われなくなったトンネルがいくつもあり、通行はできませんが、のぞくだけでも好奇心が満たされます。中には酒蔵として利用されているトンネルもあります。
星野川沿いに進んでいくと、「ほたると石橋の里」で知られる上陽町。三連アーチの三つ目橋(大瀬橋)、アーチひとつの洗玉橋、そして二連の寄口眼鏡橋と、次々に現れる大正時代の石橋は見ごたえ十分!

旧矢部線の終点・黒木駅跡はイベントスペースとして整備され、蒸気機関車が保存されています。トンネルも含めて、この廃線跡がサイクリングロードに生まれ変わったら…と考えると夢が広がりますが、現状の自然体な様子も旅情たっぷり。蒸気機関車の向かいには老舗の和菓子店「駅前まんじゅう」があり、ほっこりした栗まんじゅうや手作りの肉まんは、手軽な補給食にぴったりです。


ダムへ続く歴史街道

黒木から先は、矢部川沿いに国道442号で日向神ダムへ。ダム本体までの距離は約13km。街を抜けると緩い勾配が淡々と続き、民家が減って谷間を棚田が占めるようになります。国道は矢部川の左岸に通じ、北向きなので日陰が増えますが、運動強度が上がる(つまりしんどい)往路では涼しさが心地よいものです。復路の下りでは南向きで日当たりがよい対岸の方を走れば、自然と体感温度が上がります。このようにダムへの往復で道を使い分けると汗冷えなどの防寒対策になり、景観の変化も楽しめます。

国道442号は、関ヶ原の戦いの後に筑後に入った戦国武将、田中吉政が整備した歴史街道と重なっています。その里程(距離)を示す石柱が400年後の今も沿道に残されているので、ぜひ見つけてください。1200年以上前に創建されたという日向神社を過ぎると急坂と急カーブが連続し、一気に標高を稼ぎます。そして短いトンネルを4本連続して抜けると、ついに日向神ダムの湖面が姿を現します。


巨大なハート岩と絶品ダムカレー

いよいよ人気を集めるパワースポット、「世界最大級のハート岩」の登場です。正式名称は正面岩。文字どおり国道の正面(真横)にそびえ立つ巨大なハート形の岩で、湖畔に出てすぐと、ダム管理出張所下の小さな公園、そして対岸の県道に架かる赤いアーチ橋「蹴洞(けほぎ)橋」の3カ所がビュースポットです。中でも蹴洞橋には「恋人の鐘」が設置され、SNS映えすると評判。日向神ダムはこうした巨岩・奇岩に囲まれており、訪れる人を魅了してやみません。

ダム湖上流には観光物産交流施設「杣(そま)のさと」があり、日向神ダムカレーがイチ押しメニュー。ライスのダムとルーのダム湖に加え、ハンバーグとチーズでハート岩を、淡いピンクの漬物で湖岸の千本桜を表現する芸の細かさに脱帽。きのこがたっぷり入ったルーは絶品です。お茶はもちろん八女茶。キリッとしたのど越しが辛口のカレーを引き立てます(甘口も選べます)。


レトロ&ディープな八女の街へ

八女市には、黒木と福島のそれぞれに重要伝統的建造物群保存地区があり、旧往還道(旧豊後別路)沿いに重厚な町屋や居蔵(いぐら)が残っています。バルビゾンの道を外れ、さまようように小路を訪れると、発見に満ちています。

福島では「神社の境内にある飲み屋街」という、世にも珍しい土橋市場が異彩を放っています。なんと鳥居が飲み屋街の入り口!明るいうちからタクシーが客待ちしているので、どうしても飲みたくなったらタクシー輪行もあり…かもしれませんね。讃岐うどんと甲乙つけがたいと評判の「筑後うどん」も楽しみ。目一杯走ったら、目一杯食べる!それもサイクリングの醍醐味です。福島から羽犬塚駅まで残す距離は5kmほど。お疲れ様でした!


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